
結婚生活をスタートさせて、新しい会社への勤めも始まりました。
仕事の内容自体は派遣時代に、ある程度慣れていたので、新しい会社になっても、とまどう事は少なくて済みました。
又、ずっとサプリメントを飲み続けていたおかげで、「対人緊張」や「電話での緊張」の症状もほとんど出ず、日常の業務も問題無くこなしていました。
しかし、この会社では毎日、朝礼があり、その中で各部署が目標に対する経過を発表しなければならないのです。
発表者は若手社員が当番制でやり、他の社員や派遣社員など合わせると、総勢200人くらいの前での発表となります。
しばらくは、私には縁の無い話で安心していたのですが、いつかはその当番が私にも回ってくるかと思うと、それだけで気が滅入ってしまいました。
大学時代のゼミの研究発表の時と同じパターンになることが怖かったのです。
もしこれが原因で会社を辞めてしまったら、妻や、これまで心配ばかりをかけてきた両親に申し分けないという気持ちと、発表の当番に対する恐怖感とで押しつぶされてしまいそうでした。


そして、その発表の当番が私にも数ヶ月後にまわってくることがわかりました。
まだまだ数ヵ月後のことにもかかわらず、その日からは、その朝礼の発表のことしか頭にありませんでした。
朝礼で発表している人を見ては、それを自分に置き換えてしまい、不安で、胸が苦しくなりました。
「派遣社員のままだったら、こんなことはしなくてよかったのに」と、後ろ向きの考えばかりが浮かんできました。
毎日、刻々と朝礼での発表の順番が近づいてきます。
普段は何ともないのですが、いったん発表のことを考え出すと1日中、そのことばかりを考え続けてしまいます。
家に帰っても布団の中で、発表のことが頭を離れず、明け方まで全然眠れませんでした。
そのため寝不足で会社に行き、単純なミスを繰り返してしまったりしました。
イメージトレーニングが良いと聞き、朝礼での発表がうまくいくイメージのトレーニングをよくしていたのですが、本当にイメージ通りにできるのか?と逆に不安が大きくなってしまいました。
そのような時は決まって、失敗したときの会社の人たちの反応や、その後の会社での評判のことを考えてしまい、不安と恐怖でどこかに逃げ出したい気分になるのです。
普段、後輩達には先輩らしくふるまっていますが、発表で声や体が震え、まともに発表が出来なければ、表面的には変わらなくても、みんなが自分のことを「ダメな奴」と思うのではないか?ということばかり考えていました。
どうすればそんな醜態をさらさなくてすむのかをいろいろ考えました。
「会社での発表の前に酒を飲んで酔っ払って発表すれば、声も体も震えず、堂々とできるんじゃないか」とか「発表当日は寝ないで徹夜状態で発表すれば、緊張どころじゃないんじゃないか」などと考える自分が、本当にみじめで情けなかったです。


そんな中、偶然、社会不安障害(SAD)について書かれた新聞の記事を見つけました。
この時の衝撃は今でもはっきりと覚えています。
記事に書かれている症状と自分の症状がピタリと一致する項目が多くあり、思わず「これだっ!」と叫んでしまいました。
15年近く悩み続け、本を読んでも性格のせいとしか書いてなかった「あの極度の緊張」が、この記事では「病気である」、しかも「薬で治る」と書いてあったのです。
又、記事の中の「社会不安障害(SAD)の人は結婚したとしても、離婚することが多い、それは親戚づきあいが出来なかったり、家族ぐるみの交流ができないから」という部分にもショックを受けました。
すぐに私は本屋に行き、社会不安障害(SAD)について書かれた本を探しましたが、全く見つかりませんでした。
「うつ病」や「パニック障害」などの本は多くあるのに社会不安障害(SAD)についての本は全く無いので、こんな病気は本当にあるのかと疑がってしまいました。
次にインターネットで社会不安障害(SAD)を検索してみると・・・そこには多くの専門サイトや情報がありました。
嬉しくなって、夢中でそれらのサイトを読み漁り、一つの結論を出したのです。
その結論とは、もちろん精神科で治療を受けるというものです。
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