
運よく大学に入学してからも、相変わらず「弱い自分」のままでした。
一人暮らしも始めて、心のどこかで、大きな環境の変化が自分を変えてくれるかも、という期待があったのですが現実はそうはいきません。
多くある大学の講義の中でも、特にゼミだけは小さな部屋で、学生同士が対面形式で講義を受けます。
「対人緊張」の症状もあった私にとっては、対面形式のゼミは苦痛でした。
しかもゼミでは、教授から与えられたテーマに沿って、みんなの前で研究発表しなくてはならなかったのです。
これは3ヶ月に一度くらいの割合で発表の順番が回ってくるのですが、その日が近づくと数日前から緊張と不安で胸が一杯になりました。
時には、発表のことを考えると、気分が悪くなることさえもあったのです。
研究発表といっても、その内容は用意したレポートを読むだけの、単純で退屈なものです。
事実、私も他人の発表を聞く時は、誰が何を発表しているかなんてほとんど気にしていませんでした。
ですから頭の中では、誰も私の発表のことも、関心がないと分かってはいるのです。
そんな発表で緊張するなんて、自意識過剰だと、何度も自分に言い聞かせても、やっぱりダメでした。
最後には、不安でたまらなくなってしまうのです。
結局、研究発表は2回までは出来たのですが、3回目の発表の当日はどうしても胸の動悸がおさまらず、結局ゼミをさぼりました。
もう耐えられなかったのです。
それ以来、ゼミには二度と行きませんでした、というよりも、発表のことを考えると怖くて行けなかったのです。


大学生活が始まると、友達も数人は出来ていました。
しかし、ゼミを止めた頃にはすっかり自分に自信を無くしており、人との係わり方がぎこちなくなっているのが自分でも分かりました。
「対人緊張」の症状が悪化したのが、自分でもよくわかりました。
例えば友達を紹介されても、一度、会話が弾まなかったり、相手が楽しくないような顔をされると、もうダメでした。
又、人と会った後には、「何であんなこと言ったんだろう」とか「あんなこと言って相手は気を悪くしなかったかな」とかそんなことばかりを考えていました。
そして、どんどん悪い方へと考えてしまい、頭をかきむしり、消えて無くなりたい気持ちになってしまうのです。
人と話すときは、相手の気に障らないように、顔色ばかりをうかがうようになっており、人と会うのは疲れるだけでした。
正直、人と楽しく遊ぶということが出来ずに、次第に友達とも距離を置くようになりました。
いつの間にか、「人前で緊張する自分」から、「他人とコミュニケーションが取れない自分」になってしまっていたのです。
恐らく、今までの人生の中で一番、社会不安障害(SAD)の症状がひどい時期だったと思います。


友達とも距離を置くことで、誰にも気を使わなくてすみ、心が楽にはなりました。
しかし、その裏では大学生活を楽しんでいる友人達がうらやましく、それとは全く正反対の自分を情けなく思いました。
理想の自分は、誰とでも楽しく話し、遊び、普通にふるまえる自分。
だけど、それがどうしても出来ない現実の自分。
この理想と現実との大きな矛盾が、私を苦しめました。
結局、そのような毎日に耐え切れずに大学を中退してしまいました。
元々、大学へは「これがやりたい」等の目標などは無く、ただ流されるままの生活だった事も良くなかったのかもしれません。
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